Investment

2026-06-058801 / 8802 / 8830 / 3003 / 8951 / 3281

日本株 不動産セクター横断 - 金利逆風下の選別投資

金利上昇で出遅れた日本の不動産6銘柄を横断分析。含み益が時価総額に匹敵するデベロッパーのNAVディスカウントと、物流vsオフィスのJ-REIT選別を整理。選別的強気で住友・三井・GLPに妙味。

日本株不動産REIT金利バリュー
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作成日
2026-06-05
株価・配当基準日
2026-06-05 引け
対象銘柄
日本株 不動産セクター横断(三井不動産8801 / 三菱地所8802 / 住友不動産8830 / ヒューリック3003 / 日本ビルファンド投資法人8951 / GLP投資法人3281)
結論
選別的強気(Selective Overweight)/ 含み益型デベロッパー(住友・三井)と物流 J-REIT(GLP)に選別妙味
データソース
各社決算短信・有価証券報告書・決算説明会資料、日本銀行、財務省、国土交通省、不動産証券化協会、三鬼商事、CBRE、東京証券取引所配信、Yahoo!ファイナンス
レポート概要
金利上昇で出遅れた不動産セクターを横断分析。含み益が時価総額に匹敵するデベロッパーの NAV ディスカウントと、物流 vs オフィスの J-REIT 選別を整理します。
分析モデル
Claude Opus 4.8 (1M context)

本資料は情報提供のみを目的とし、投資勧誘・投資助言を行うものではありません。投資判断は読者ご自身の責任で行ってください。

金利という単一の逆風で出遅れた日本の不動産6銘柄を、含み益型デベロッパーとフロー利回り型J-REITに分けて選別します。

0. 結論

本質は「金利逆風で総じて割安になった不動産セクターから、含み益型デベロッパーを選別して拾う」レポートです。J-REIT は高利回りでも金利スプレッド縮小で安値圏にあり、物流とオフィスで明暗が分かれます。

投資判断
選別的強気 含み益型デベロッパーと物流 J-REIT に選別妙味
金利逆風でセクター全体が出遅れた結果、含み益が時価総額に匹敵する総合デベロッパーが NAV ディスカウント拡大の局面にあります。賃貸ファンダは歴史的に強く、株主還元・ガバナンス改革が割安是正の触媒です。最大のリスクは追加利上げで、長期金利 3% 超なら割安が「適正」へ転化します。テーマ内では住友・三井(バリュー)と GLP(物流インカム)に妙味があると判断します。

セクター環境 — 金利が単一の逆風、賃貸ファンダは歴史的に強い

不動産セクターは 2026 年に入って大きく出遅れました。背景は金利です。日銀の政策金利は 2025 年 12 月に 0.75% へ引き上げられ、市場は 2026 年内の 1.0% 到達を織り込みつつあります。10 年国債利回りは 2026 年 6 月時点で約 2.65% と、約 27 年ぶりの高水準に達しました。一方で賃貸の実態は強く、東京都心 5 区のオフィス空室率は 2.20% と歴史的なタイト需給、地価は全国全用途平均で前年比 +4.6% とバブル崩壊後で最高の上昇率です。つまり「金利という逆風」と「賃貸という追い風」が綱引きしている状態です。

バリュエーション機会 — 含み益が時価総額に匹敵するのに NAV ディスカウント拡大

総合デベロッパー大手の保有不動産には巨額の含み益が眠っています。三井不動産の賃貸等不動産の含み益は約 3.99 兆円で、時価総額 4.06 兆円にほぼ匹敵します。それでも株価は NAV(純資産価値)を大きく下回ります。住友不動産は 1 株修正 NAV 約 6,026 円に対し現値 3,550 円が約 ▲41% と、最も深いディスカウントです。市場が織り込む将来成長率も悲観的で、三井の現値が示唆する成長率は約 ▲0.32%と、過去の連続増収実績と整合しません。

構造リスク — 金利上昇が「含み益型」と「フロー利回り型」の明暗を分ける

最大のリスクは追加利上げです。同じ不動産でも、含み益型のデベロッパーとフロー利回り型の J-REIT では効き方が逆です。以下の点をまずご確認ください。

判定 — 選別的強気(確信度: 中)

論点「含み益が時価総額に匹敵するのに NAV ディスカウント拡大」が positive、論点「賃貸ファンダは歴史的に強いが株価未反映」が positive、論点「株主還元・ガバナンス改革が触媒」が positive と、バリュー面の追い風が揃います。一方で論点「金利上昇が含み益型とフロー利回り型の明暗を分ける」が前提条件として上位に立ち、追加利上げが続けば割安が「適正」へ転化します。総合的には、含み益型デベロッパー(特に住友不動産・三井不動産)と物流 J-REIT(GLP)に選別的な妙味があると判断します。


1. 不動産セクターの全体像

不動産セクターを理解する第一歩は、金利・賃貸ファンダ・J-REIT 市場という 3 つの土台を押さえることです。

まず金利です。前述のとおり日銀の政策金利は 0.75%、長期金利は約 2.65% と上昇しました。不動産は借入で資産を買って賃料を得るビジネスなので、金利上昇は資金調達コストの増加とキャップレート(不動産の利回り)上昇という二重の圧力になります。これがセクター全体の出遅れの主因です。

次に賃貸ファンダメンタルズです。2025 年の事業用不動産投資額は 6 兆円超と過去最高を更新しました。オフィス空室率 2.20%・地価 +4.6% と需給は歴史的にタイトで、賃料は上昇基調にあります。ただし住宅は別で、2025 年の新設住宅着工戸数は 74.1 万戸と 62 年ぶりの低水準(3 年連続減)でした。賃貸は強く、分譲は弱いという二極化が起きています。

最後に J-REIT 市場です。東証 REIT 指数は 2026 年 6 月 5 日時点で 1,751.79 と、年初の 2,000pt 台から下落しました。金利上昇で利回り商品の魅力が相対的に低下したためです。

日銀政策金利
0.75%
10年国債利回り
約2.65%
都心5区空室率
2.20%
東証REIT指数
1,751.79

今回取り上げる 6 銘柄は、この構図のなかで異なる役割を持ちます。総合デベロッパー大手の三井不動産(8801)・三菱地所(8802)・住友不動産(8830)は含み益型の代表格です。中堅のヒューリック(3003)は高 ROE で大手と対比でき、J-REIT のオフィス特化型・日本ビルファンド投資法人(8951)と物流特化型・GLP 投資法人(3281)はフロー利回り型を担います。


2. 金利の明暗

不動産投資で「金利が上がると不動産株は下がる」とよく言われますが、実は効き方は銘柄タイプで真逆になります。これがこのセクターを読み解く最大の鍵です。

含み益型のデベロッパーは、保有不動産の含み益が価値の源泉です。借入は長期固定が中心なので、金利が上がっても当面の利益への直撃は限定的です。三菱地所は負債が長期 94.7%・固定 82.2% で調達コストの直撃は限定的です。むしろ怖いのはキャップレート上昇による資産価値(NAV)の目減りですが、これは賃料上昇が一部相殺します。一方で住友不動産はデベロッパーの中では感応度が高く、有利子負債 3.89 兆円・D/E 1.7 倍で、中計では金利負担増を FY2026 +40 億円、FY2027 +80 億円、FY2028 +120 億円と織り込んでいます

フロー利回り型の J-REIT は、分配金利回りと長期金利のスプレッド(差)が価格を決めます。金利が上がるとスプレッドが縮み、投資口価格が下がります。前述のとおり NBF は理論上 ▲8.9% の下押し圧力を受けます。ただし J-REIT のなかでも耐性は分かれ、GLP は固定金利比率 94.5% で借換リスクが小さく、金利上昇局面でも調達コストへの影響は限定的です。

したがって金利耐性のランクは、強い順に GLP ≧ NBF > 三菱地所 ≧ 三井 > 住友 > ヒューリックとなります。レバレッジが低く固定化が進んだ銘柄ほど金利に強いという、シンプルな原則が効いています。


3. 賃貸ファンダメンタルズ

金利が逆風なら、賃貸ファンダは強い追い風です。両者の綱引きこそがこのセクターの投資判断を左右します。

オフィスは歴史的なタイト需給にあります。空室率 2.20% という水準は、貸し手が強気に賃料を上げられる環境を意味します。三菱地所は丸の内オフィスの賃料改定で増額幅 5%〜20% 以上を実現し、物価連動賃料も導入、丸の内事業の営業利益を 2026 年度 1,200 億円へ引き上げる計画です。これは「質が価値を生む」典型例です。

賃貸の比率が高い銘柄ほど、この追い風の恩恵を受けます。住友不動産は不動産賃貸が売上構成 46%・セグメント利益率 40% で、全社営業利益率 28.3% を牽引しています。J-REIT も同様で、NBF の期末稼働率は 98.3%GLP の稼働率は 97.7% で 27 期連続の賃料増額と、満室に近い水準を保っています。

一方で分譲は逆風です。住宅着工が 62 年ぶりの低水準にあるため、分譲偏重のビジネスは厳しく、賃貸偏重ほど安定して恩恵を受ける構図です。

注目すべきは、これだけ賃貸ファンダが強いのに株価が出遅れている点です。6 銘柄はいずれも、日経平均が過去 1 年で +60% を超える上昇を見せるなかで逆行してアンダーパフォームしました。ファンダと株価の乖離こそが、次章のバリュエーション機会につながります。


4. バリュエーションと NAV ディスカウント

このセクターの投資妙味の核心は、含み益と株価の乖離にあります。

総合デベロッパー大手 3 社は、いずれも巨額の含み益を抱えています。三菱地所の賃貸等不動産の含み益は約 5.01 兆円で簿価比 +111.7%住友不動産は約 4.46 兆円で簿価の約 2 倍に達します。これらを反映した修正 NAV で見ると、株価の割安さが際立ちます。

3 社のなかで最も深く割安なのが住友不動産です。修正 NAV 比 ▲41% という水準は、解散価値の 6 割でしか評価されていないことを意味します。三井不動産も、含み益込みの税後修正 NAV 約 2,223 円に対し現値 1,495 円が約 ▲32.7% のディスカウントで、会社自身が決算説明会資料で「足元の株価は相当に割安」と明言しています。三菱地所は一見すると違います。簿価 PBR は 1.78 倍と割高に見えますが、含み益込み修正 NAV(税効果後)base 4,600 円で見ると時価 NAV ベースでは割安という二面性を持ちます。

市場の悲観は逆 DCF にも表れます。住友の現値が示唆する成長率は 1.82% で、過去 3 年の売上 CAGR 4.0% を下回ります。つまり市場は含み益の実現も賃料成長もほとんど織り込んでいません。

J-REIT は評価軸が異なります。J-REIT の平均予想分配金利回りは約 5.13%で、デベロッパーのような含み益ではなく分配金利回りと NAV 倍率で評価します。この点は次章で詳しく見ます。


5. J-REIT の選別

J-REIT はデベロッパーと違い、分配金利回りと NAV 倍率で評価します。今回の 2 銘柄は、同じ REIT でも対照的なポジションにあります。

物流特化の GLP 投資法人は割安です。鑑定 NAV 倍率 0.83 倍のディスカウント・利回り 5.07% で、目標投資口価格は 147,000 円(現値比 +12.4%)と評価できます。さらに下値には支えがあります。NAV 倍率 0.9 倍未満で発動する自己投資口取得枠 130 億円が、現在の鑑定 NAV 倍率 0.83 倍ですでに発動水準を満たし、需給のバックストップとして機能中です。物流は EC・3PL 需要を背景に稼働率も高く、金利耐性も最強ランクで、割安・成長・安全性が揃っています。

一方でオフィス特化の日本ビルファンド投資法人(NBF)は慎重に見ます。目標投資口価格は 110,539 円で、現値 119,400 円に対し ▲7.4% と割高側です。簿価 NAV 倍率 1.42 倍のプレミアムは J-REIT 平均 0.95 倍に対し剥落リスクを抱えます。最大手ゆえの流動性・スポンサー(三井不動産)・高格付というプレミアムは正当ですが、利回り 4.12% は J-REIT 平均 5.13% より低く、金利上昇局面ではデュレーション(金利感応度)の長さが弱点になります。

同じ J-REIT でも、物流は割安・オフィス最大手は割高側という選別が必要です。


6. 株主還元とガバナンス

NAV ディスカウントが縮まるには触媒が要ります。セクター全体で株主還元とガバナンス改革が進んでおり、これが割安是正の引き金になりえます。

最大の触媒は住友不動産です。アクティビストの Elliott が 2.99% から 3.51% へ買い増し、会社は監査等委員会設置会社への移行(2027 年 6 月)・買収防衛策廃止・政策保有株縮減・累進配当を並走させており、要求と方向性が整合的です。割安・還元余地・アクティビストの 3 点が揃う、最も触媒が効きやすい銘柄です。

三菱地所も還元を強化しています。2026 年 6 月 30 日付で自己株式 612.88 万株を消却し、発行済株式数を約 2.7% 減らします。加えて2030 年まで原則毎年 3 円増配の累進配当、配当性向を 2030 年に原則 60% 以上へ引き上げる計画です。三井不動産も2026 年度還元分として 400 億円の自社株買いを決議しましたが、時価総額の約 1.0% にとどまり規模は限定的です。

逆に物足りないのがヒューリックです。大型の自社株買いプログラムが 2 期連続で未実施で、株主還元は配当中心です。連続増配は魅力ですが、株価下落局面での機動的な下支えには欠けます。

  • 2026-06-16〜17
    日銀金融政策決定会合
    追加利上げ判断。利上げ打ち止め示唆ならセクター全体に見直し買い、追加利上げ示唆なら続落。最大の共通カタリストです。
  • 2026-06-26
    住友不動産 定時株主総会
    Elliott との対話進展と監査等委員会設置会社移行への布石が焦点です。
  • 2026-06-30
    三菱地所 自己株式消却
    612.88万株(発行済の約2.7%)を消却し、EPSを押し上げます。
  • 〜2026-08-20
    GLP投資法人 自己投資口取得枠
    130億円枠がNAV0.9倍未満で発動中。投資口価格の需給フロアです。
  • 2026年8月上旬
    各社 第1四半期決算発表
    通期計画の進捗と賃料改定の動向を確認します。

7. 銘柄横並び比較

ここまでの論点を踏まえ、6 銘柄を横並びで比較します。現値・目標株価・上昇余地・利回りの組み合わせから、各銘柄のテーマ内での立ち位置が見えてきます。

銘柄サブグループ現値目標株価上昇余地利回り判定
三井不動産 (8801)総合大手・首位1,495 円1,987 円+32.9%2.47%Buy
三菱地所 (8802)総合大手・丸の内3,980 円4,600 円+15.6%1.23%Hold
住友不動産 (8830)総合大手・賃貸特化3,550 円4,519 円+27.3%1.46%Buy
ヒューリック (3003)中堅・高 ROE1,656 円1,832 円+10.7%4.05%Hold
日本ビルファンド (8951)オフィス J-REIT119,400 円110,539 円▲7.4%4.12%Watch
GLP 投資法人 (3281)物流 J-REIT130,800 円147,000 円+12.4%5.07%Buy

この表から、含み益型デベロッパー(特に三井・住友)が上昇余地で優位、J-REIT は利回りで優位という棲み分けが読み取れます。デベロッパーは値上がり益(キャピタルゲイン)狙い、J-REIT は配当狙い(インカム)という性格の違いがはっきり出ています。論点別に各銘柄がどう受益・反作用するかは、次の効き方マトリクスに整理しました。

論点三井三菱地所住友ヒューリックNBFGLP
金利の明暗中立中立反作用反作用反作用受益
賃貸ファンダ受益受益受益受益受益受益
NAV ディスカウント受益受益受益受益中立受益
REIT 選別中立中立中立中立反作用受益
還元・ガバナンス受益受益受益反作用中立受益

8. 推奨バスケット

個別銘柄の優劣だけでなく、投資目的に応じた組み合わせを考えると判断しやすくなります。料理に例えるなら、同じ食材(6 銘柄)でも、誰に出すか(投資目的)でレシピ(組み合わせ)が変わるイメージです。論点ベースで 4 つのバスケットを提案します。

等ウェイト(セクター全体に分散) — 6 銘柄を均等に持ち、不動産セクター全体の出遅れ修正に賭ける最もシンプルな構成です。想定リターンは約 +15%。金利の方向感に確信が持てない場合の入り口に向きます。

バリュー(NAV ディスカウント収斂狙い) — 住友・三井・ヒューリックを中心に、修正 NAV からの乖離が縮むことに賭けます。想定リターンは最も高い約 +25% ですが、住友の高ベータゆえ値動きも大きくなります。割安是正の触媒(還元・ガバナンス)が効く前提です。

グロース(賃料成長・物流 DPU・海外) — 三菱地所・GLP・三井を中心に、丸の内の賃料成長や物流の分配金成長、海外展開に賭けます。想定リターンは約 +20%。

ディフェンシブ(含み益の質・最大手・金利耐性) — 三菱地所・NBF・三井を中心に、含み益の質と最大手の安定性を重視します。想定リターンは約 +13% と控えめですが、値動きは最も小さくなります。


9. シナリオと反証

投資判断には、それが崩れる条件を先に決めておくことが重要です。3 つのシナリオで整理します。

強気(確率 30%) — 日銀が利上げを打ち止め、長期金利がピークアウトする展開です。金利で売られた含み益型デベロッパーに見直し買いが入り、J-REIT も利回りスプレッド拡大で反発します。

中央(確率 50%) — 政策金利が 1.0% で頭打ちになり、賃料上昇が金利上昇を相殺する展開です。デベロッパーの NAV ディスカウントは緩やかに縮小し、含み益型に妙味が残ります。

弱気(確率 20%) — 10 年金利が 3% を超えて上昇する展開です。キャップレート上昇で NAV 自体が下押しされ、割安が「適正」へ転化します。J-REIT は続落します。

この投資判断が間違いになる主な反証条件は、次の通りです。第一に、日銀が 2026 年内に 1.0% を超えて利上げを加速し、10 年金利が 3% 超へ上昇すること。第二に、都心オフィス空室率が 3% 超へ上昇し、賃料改定率が失速すること。第三に、住友で Elliott と経営の対立が顕在化し、各社の還元が停滞することです。これらが現れたら、含み益型の割安ストーリーは崩れます。

強気シナリオが効く条件

日銀が利上げを打ち止め、長期金利がピークアウトすれば、金利で売られた含み益型デベロッパーに見直し買いが入ります。

賃料改定の加速で含み益が一段と拡大し、NAV ディスカウントが縮小します。

住友・三井のバリュー妙味が最も大きく開花する展開で、REIT も利回りスプレッド拡大で反発します。

弱気シナリオ・反証条件

10 年金利が 3% を超えるとキャップレートが切り上がり、NAV 自体が下押しされて割安が「適正」へ転化します。

都心オフィス空室率が 3% 超へ上昇し賃料改定が失速すれば、含み益拡大のストーリーが崩れます。

住友で Elliott と経営の対立が顕在化すれば、割安是正の触媒も消えてしまいます。


10. 個別銘柄サマリと投資判断

ここまでの論点を踏まえ、6 銘柄の投資判断を整理します。

三井不動産(8801)— Buy / バリュー — セクター首位で最も分散した総合デベロッパーです。NAV ディスカウント ▲33% を会社自身が「割安」と認め、目標株価は現値比 +32.9%。値上がり益を狙う中長期投資家向けです。

三菱地所(8802)— Hold / クオリティ — 丸の内含み益 5 兆円の質が魅力ですが、簿価 PBR 1.78 倍は割高に見え、上昇余地は +15.6% と中程度です。含み益の質を重視する長期投資家に向く一方、割安感では他社に劣ります。

住友不動産(8830)— Buy / バリュー — 営業利益率 28% の高収益と、修正 NAV 比 ▲41% という最深のディスカウント、そして Elliott という触媒が揃います。テーマ内で最もバリュー妙味が大きい銘柄です。ただし金利感応度の高さには注意が必要です。

ヒューリック(3003)— Hold / バリュー修正 NAV 1,756 円に対し ROE 13% とセクター最高ですが、これは高レバレッジ起因で金利耐性が最弱です。逆 DCF の織り込み成長率は +1.17% と悲観的で割安ですが、還元の手薄さと金利リスクで様子見が妥当です。

日本ビルファンド投資法人(8951)— Watch / インカム — オフィス特化 J-REIT 最大手で稼働率 98.3% と質は高いものの、利回り 4.12% はフェアバリューを下回り割高側です。金利のピークアウトを待ちたい局面です。

GLP 投資法人(3281)— Buy / インカム — 物流特化で鑑定 NAV 0.83 倍ディスカウント、利回り 5.07%、自己投資口取得枠のフロア、最強の金利耐性が揃います。インカム狙いの投資家にとってテーマ内ベストです。

投資判断
選別的強気 含み益型デベロッパーと物流 J-REIT に選別妙味
テーマ全体としては選別的強気です。値上がり益を狙うなら最深ディスカウントの住友不動産とセクター首位の三井不動産、インカムを狙うなら物流で割安な GLP 投資法人がテーマ内ベストです。三菱地所は含み益の質、ヒューリックと日本ビルファンドは金利のピークアウトを待つ様子見が妥当と考えます。最大の前提は金利で、追加利上げが続けば割安が「適正」へ転化する点に注意が必要です。

11. 用語集

主要用語
NAV(純資産価値)
Net Asset Value。不動産の時価から負債を引いた 1 株(1 口)あたりの価値。含み益を反映した「解散価値」の目安で、株価が NAV を下回ると割安とされます。
キャップレート
不動産の年間純収益を物件価格で割った利回り。金利が上がるとキャップレートも上昇し、同じ収益でも物件価格(資産価値)が下がります。
LTV
Loan To Value。総資産に対する有利子負債の比率。J-REIT の財務健全性を測る代表指標で、低いほど安全です。
DPU(1 口当たり分配金)
J-REIT が投資口 1 口あたりに分配する金額。株式の 1 株配当に相当し、分配金利回りの計算基礎になります。
含み益
保有不動産の時価が帳簿価格を上回る差額。会計上は利益に計上されず、売却して初めて実現します。総合デベロッパーの価値の源泉です。
逆 DCF
現在の株価から逆算して、市場がどれだけの将来成長率を織り込んでいるかを求める手法。実績や予想成長率と比べることで、株価が悲観的か楽観的かが分かります。
イールドスプレッド
J-REIT の分配金利回りと長期金利の差。差が縮むと REIT の魅力が相対的に低下し、投資口価格の下落要因になります。

12. 参考資料

GLP投資法人 2026年2月期 決算短信(REIT)GLP投資法人 2026年2月期 決算短信(REIT)・決算説明資料GLP投資法人 2026年2月期 決算説明資料GLP投資法人 第28期 決算説明資料 P4・P16-17JPX 銘柄別信用取引週末残高 2026-05-29ヒューリック 2025年12月期 決算短信 連結財政状態ヒューリック FY2026/12 第1四半期決算短信 配当の状況ヒューリック 中長期経営計画(2026-2036)資本・財務戦略/株主還元ヒューリック 有価証券報告書 FY2025/12(D/E・自己資本比率)ヒューリック 第95期有価証券報告書 自己株式の取得等の状況ヒューリック 第96期有価証券報告書 FY2025 キャッシュ・フローの状況ヒューリック株式会社 第95期有価証券報告書(2025年12月期、EDINET E00523)「配当政策」三井不動産 中期経営計画& INNOVATION 2030 p.25-26, p.34 + 決算説明会資料 p.5, p.34三井不動産 有価証券報告書 セグメント情報三井不動産 決算短信 2026年3月期 連結BS三井不動産 決算短信2026年3月期 p.13 + 決算説明会資料 p.4(自己株式取得400億円決議)三菱地所 2026年3月期 決算短信三菱地所 CEOプレゼンテーション(FY2026Q4)p.5『オフィスリーシング』三菱地所 データブック(FY2026Q4)p.13-14(含み益の地理的内訳)三菱地所 有価証券報告書 FY2025 所有者別状況住友不動産 FY2026Q4 決算説明資料(政策保有株 1,581 億円・前期末比 -884億円)住友不動産 IR 基調説明 2026年3月期決算説明会住友不動産 コーポレート・ガバナンス報告書(2025-11-14 更新、2027年6月 監査等委員会設置会社移行)住友不動産 有価証券報告書 FY2025「事業等のリスク (6) ファイナンスに関するリスク」住友不動産 決算短信 FY2026Q4 サマリー(2)住友不動産 第十次中期経営計画 キャッシュアロケーション国土交通省 不動産特定共同事業等について国土交通省 令和8年地価公示 報道発表資料国土交通省 建築着工統計調査(新設住宅着工戸数)国土交通省 都市再生緊急整備地域における各種施策日本ビルファンド ポートフォリオデータ(公式 IR)日本ビルファンド 決算短信 第49期(2025年12月期)日本ビルファンド 決算短信 第49期(分配金)/財務省 国債金利情報日本ビルファンド投資法人 有価証券報告書 第49期「(4)投資法人の機構(ア)投資主総会」p.19日本銀行 金融政策決定会合(政策金利0.75%へ引き上げ2025-12-19)+ 2026年公表文一覧日本銀行『金融政策決定会合の運営』『2026年 公表文一覧』財務省 国債金利情報(10年2.65%)+ Yahoo Finance 3281.T 予想利回り5.07%ARES J-REIT View マーケット概況ARES J-REIT View マーケット概況 / ARESマンスリーレポート2026年1月ARES/CBRE 不動産マーケットアウトルック2026・JLL 日本不動産投資市場展望GLP投資法人 公式IRJLL 2025年日本不動産投資市場動向の展望(海外投資家比率約39%)Yahoo Finance / 取引所配信 3281.TYahoo Finance 8801.TYahoo Finance Japan 3003.T 日次OHLCの直近52週高値Yahoo Finance Japan 3003.T 日次OHLCを14日True Range平均で自前算出Yahoo Finance Japan 8830.TYahoo Finance Japan 8951.TYahoo! Finance Japan 3003.TYahoo! Finance Japan 8802.TYahoo! Finance Japan 8802.T 日足ヒューリック IR ライブラリ 決算短信 BS(自己資本・有利子負債から算出)三鬼商事 オフィスマーケット(東京)住友不動産 決算短信 FY2025 BS東京証券取引所(JPX)REIT 市場関連データ